果物狩りを保育園で実施するにあたって、単に楽しそうだから季節行事として定番だからといった理由だけで行うのではなく、その活動がどのような意図や目標に基づいているのか、すなわちねらいを明確にすることが非常に重要です。保育士が活動の目的をしっかりと理解し、子どもたちに伝え、実践の中で振り返ることによって、教育活動としての質は格段に高まります。特に、保育士が意識すべきなのは、子どもたちの発達段階に即した学びをどのように設計し、どのように評価するかという点です。
幼児期は、遊びの中に学びがあるとされる発達段階です。この考え方に則ると、果物狩りという体験そのものが単なるレクリエーションではなく、子どもの成長に寄与する学習機会であると捉えることができます。たとえば、園児がぶどうを見つけたときの喜び、どの実を収穫するかを選ぶときの判断力、自分で摘んだ実を大切そうに持ち帰る姿には、自己決定や責任感、達成感といった内的成長が現れています。こうした気づきを保育士が観察し、言語化し、振り返りの中で共有することが、教育活動としての深みを生みます。
文部科学省の保育所保育指針でも、意図的な環境構成保育者の援助子どもの主体性を軸とした保育実践が求められています。これは単に子どもを自由に遊ばせるだけでなく、環境をどう整え、どのように関わるかを計画的に設計しなければならないという意味です。たとえば、果物狩りの前に図鑑や絵本で果物の成長過程を学ぶ機会を設けたり、活動後に実際に収穫した果物を観察して気づきを発表する時間を設けることが考えられます。これにより、活動のねらいが子どもたちの中に定着し、より豊かな学びへとつながります。
活動後の振り返りは、ねらいの達成度を確認する上でも非常に重要です。保育士が個々の子どもの様子を記録し、次の活動への改善点や発展的な展開を考えることで、保育実践全体の質が高まります。特に、観察項目を事前に設定しておくことで、ただの感想にとどまらず、具体的な行動や発言をもとに評価が行えるようになります。
以下は、果物狩りの活動におけるねらいと子どもの行動例を対応させた表です。
ねらいと観察ポイントの整理表
活動のねらい
|
子どもの行動例
|
保育士の視点
|
食べ物への関心を深める
|
実を選ぶときに大きいのが甘そうこれは赤くなってるとつぶやく
|
色・形・熟し具合などへの関心の高さを確認
|
自己決定力と判断力を育てる
|
他児の選んだ実を真似するのではなく、自分で選んで収穫する
|
主体的な選択の有無、選び方の理由を言語化できるかを観察
|
社会性を育てる
|
友達と協力して高い位置の果物を取ろうとする、一緒に見せ合う
|
共同作業・共感的なやり取り、ルール遵守の様子を確認
|
表現力と自己肯定感を育てる
|
これ見て!と誇らしげに果物を見せる、自分の収穫物について語る
|
自信を持って人に伝える力、肯定的な自己表現の有無を把握
|